大腸癌の父との記録とその後の雑記

癌の父親を介護した次女の記録とその後

せん妄

11月8日日曜日面会15分

バナナミルクを美味しそうに飲む父親。

病院は何も自由に飲ませてくれないと愚痴。

ナースコールが壊れていると訴えてくる。

立ち会っていた看護師も困った顔で

「壊れてないのですけど…」という

恐らく何回も何回かも訴えているのだろう。

ナースコールの配線が気に食わないらしい。

ネジを閉めすぎてるから、これじゃ繋がらないと言っている。

電気関係の会社に中学卒業してから勤めていた父の得意分野。

病室内の配線が気になって仕方がないらしい。

 

私の事を理解しているかは聞かないでおいた。

 

「俺がここに現れたの良く分かったな!」というので笑ってしまった。

「現れたって連絡きたから、すぐに来たんだよ」と答えると満足そうだった。

家の事が心配らしい。昨日家に帰ったら知らない業者に改装されちゃったんだと言う。

「今日、何処に泊まるの?」と私に聞くので、

「自宅が心配なら私が留守番をしましょうか。」と提案したらお願いされた。

私の家なんだけどね笑笑

 

まともに会話が成立する時は、泣いてしまう様になった。

1番仲の良いお兄さん(私からしたら叔父さん)を連れてくると言ったら、

こんなになってるのを見られたくないんだよぉと泣きじゃくる。

子供みたいに手で涙をゴシゴシしながら、

ほんとうに悲しくて堪らないのだろう。

大丈夫だよ。ここに移動したのは、皆んなが面会に来られるからだよ。

心配しないで。

皆んなに会ったら元気になるから

泣かないでねと宥めた。

 

カッコつけて、大きな声で威勢のいい父親が

たった3日会わないうちに、変わってしまった。

怒鳴り散らして、全くカタギに見えないパンチパーマの強面で、

会社員のくせにテキ屋に憧れて、退職後はテキ屋でアルバイトまでしてた。

あの父が、今泣きながらバナナミルクを飲んでいる。

せん妄によって、本来のその人の姿が見えてくると聞いた事がある。

この人、虎の皮をかぶった仔猫ちゃんだったのかと思うと可愛らしく思えた。

 

緩和病棟に来てから、痛みは和らぎ、

いろんな人と会える様になったら

劇的に元気になると妄想していたが、

完全に妄想だった。

確実に病は進行していて、

父は痩せていく。

残された時間の少なさを感じる1日だった。

 

最近ぼーっとしてしまう。

考え事しながらバイクを運転してしまう。

気を付けないと。