大腸癌の父との記録とその後の雑記

癌の父親を介護した次女の記録とその後

見えないけど聞こえる

頭がおかしくなったのかとおもった。

 

それは朝5時から父の服を整理していた時のことだ。

1番気に入っていた上着を捨てようとゴミ袋に入れた。

2階の父の部屋にあったワイシャツ

これは着るはずが無いのに私が洗った物だ。

1階へ降りて洋服ダンスから更に捨てる服を物色。

ここには仏壇がある。

ジーパンもゴミ袋へ入れた。

「全部捨てちゃっちゃぁ、困んべぇよ!」

そうハッキリ聞こえた(気がした)

父が服を捨てるなと言う。

勿論姿はない。

「お前は、なんだって捨てちまう」

父は不満そうだった。

貴方は死んだから肉体が無いの。

だから服は着られない。とは言え無かった

私は声に出して優しく語りかけてみた

「お父さんさぁ…ほら、痩せたからね。

体型が凄く変わっちゃったからさ〜。これは着られないよ。」

「それだってよぉー。上衣は捨てなくても良かんべぇよ〜」

父の相模弁がハッキリ聞こえた。

「ダメダメ、サイズが合ってないのは変だもん。コレは捨てる。また新しいの買ってあげるから!」

そう言って玄関を出てゴミ捨て場へ向かった。

涙が流れた。

 

夕方、久しぶりに母親から連絡が来た

父と32年前に離婚した母が

「今朝、お父さん来たけど何があったの?洋服をね1階の和室に並べて私の事見るのよ!」

 

思わず「あー知ってる」と答えた

 

父は洋服を捨てるなと言っても私が捨てたので

母にチクリに行ったんだ。

可愛いじゃないか。

 

見えないけど聞こえるし

聞こえなく時は感じる。

 

なかなか面白い。

頭がおかしくなったのかな。

それでも良いかと思いながら。

気付いたら夏が来る。