大腸癌の父との記録とその後の雑記

癌の父親を介護した次女の記録とその後

新しい風

遺品整理は全く進まず

この家に暮らして一年が過ぎた。

タバコのヤニも破れた網戸もそのままに

主人がこの世を去ったことに気付かないまま

東側の部屋は父を待ち続ける。

誰も来ない家にとうとう客人が来る。

頑なに人を拒んできたが、その人はそよそよとやって来た。

片付けられない事を理由に誰も家に入れたくなかった。

部屋は精神状態を現す。

混乱したまま帰国したあの時から

ずっと頭の中もぐちゃぐちゃだ。

新しい風はそよそよと私の心を揺らし

頬を撫でる。

 

お父さんの家に君が住んでいる

ただそれだけで良いじゃないか。

それだけ言うと新しいは

また私の頬をそっと撫でて消えた。

 

人に騙されても人を信じ続けた父と同じように

今度こそはと信じてみたくなる

心地良い風。